15~30秒の短いCMの中では、当然ながら商品のいい部分しか伝えようとしません。契約者にとって不利なことや注意しなければならないことは、CMの終わりの方で小さい字で表示されますが、よっぽど動体視力のいい人でないと読み取れないでしょう。まして、その内容も限られています。

 通販で保険契約をする場合には、保険会社から申込書と一緒に送られてくるパンフレットや重要事項説明書等の資料を熟読し、その内容を自ら理解しなければなりません。重要事項説明書には、先に述べた契約者にとって不利なこと(保険金が支払われない場合等)や諸々の注意事項が記載されています。しかしながら、難解な表現が多くどれだけの人がきちんと内容を理解できているのか常々心配になります。

 そこでこのシリーズでは、テレビCMで流れている通販型保険商品について、加入時に注意すべき点をできるだけ分かりやすく整理してお伝えします。但し、テレビCMの範囲に沿っていますので、ここに記載した内容が全てではありません。契約時には事前に商品資料や重要事項説明書を必ず熟読され、不明な点は面倒がらずに直接保険会社に問い合せるようにお願いします。

 この記事はあくまでも公正中立な立場で、消費者の皆さんが商品の内容を十分に理解し納得した上で保険加入をしていただくお手伝いをするのが目的です。
 従って、決して特定の保険会社や商品、ならびにCM出演者に対する批判や誹謗中傷をするためのものではありませんので、あらかじめご了承ください。
 尚、万一記事の記載内容に誤りがあった場合には、お手数でもこちらからご指摘いただければ幸いです。速やかに訂正させていただきます。

 

【商品内容と特長】

テレビCMのキャッチコピー 50 80 よろこんで
商品のペットネーム 満50~80歳まで入れる保険「これからだ」
正式商品名 長期補償傷害保険
引受保険会社 アメリカンホーム保険会社
商品の通販サイト http://www.americanhome.co.jp/fnpa/index.html
テレビCMで流される商品の特長 満50歳から80歳まで入れます
お医者さんの診査は不要
ケガの治療費は最高100万円
お葬式の費用も保障
保険料は年齢に関係なく誰でも月々2,800円(1口)
しかも掛け捨てではありません

 

【加入に当たって注意しなければならない点】

  1. 保険期間は10年で、以降保険終期が90歳を超えない範囲で自動継続が可能です。
    但し、10年後の継続時にそれまでの葬祭費用保障額と同額で継続する場合には、保険料が上がります
    一定の条件を満たせば保険料を変えずに継続することも可能ですが、その場合には葬祭費用保障額が下がります。
    重要事項説明書によれば、65歳女性が月2,800円の1口で加入すると、葬祭費用保障の満額(葬祭費用の仕組みは後述)は75万円ですが、10年後75歳の時に同保障額で継続した場合には、保険料は月2,800円から6,400円(予定)となります。
    逆に、月2,800円の保険料を変えずに継続した場合には、葬祭費用保障額は75万円から16万円(予定)に下がってしまいます。
  2. ケガを対象とする傷害保険ですので、病気の治療費は一切受け取れません。(病気で死亡の場合に葬儀費用は受け取れます。)
  3. ケガの治療費は入院・通院に関わらず受け取れます。但し、国民健康保険や組合管掌健康保険等の公的医療保険制度を利用した治療の自己負担実費分で、かつ100万円が限度となります
    つまり、公的医療保険を使った治療費用、その際に医師の指示で購入した薬代(処方箋により院外薬局などで支払った費用)や医療器具代(松葉杖やコルセット等)が対象となります。
    個室などに入院した時にかかる差額ベット代の保険金支払条件ついて重要事項説明書には、「医師の指示により特別の療養環境の病室に入院する場合において負担する一般室との差額」と記載されていますので、自ら望んで個室に入った場合の差額ベット代については受け取れません
    もちろん、医師の指示によらずに自ら購入した薬や医療器具、公的医療保険を利用しない自費治療については受け取ることはできません
  4. 葬祭費用保障額には、不慮の事故による場合と病気による場合でそれぞれ次の条件があります。

    不慮の事故で死亡した場合、契約初年度は保障満額の20%で、以降1年毎に20%ずつ増加し、保険期間の開始後5年目から100%(満額)となります。5年目以降は10年目まで保障額は変わりません。
    具体的には、55歳男性が月2,800円の1口で加入した場合の保障額は、1年目:103,800円、2年目:207.600円、3年目:311,400円、4年目:415,200円、5年目以降10年目迄:519,000円となります(保険会社WEBサイトにて試算)。

    病気で死亡した場合、契約後3年目以降は上記不慮の事故の場合と同じですが、1~2年目については「葬祭費用補償特約部分の月払保険料」×「死亡した日の前日までに到来した月払保険料の払込回数」となります
    保険会社のWEBサイトによれば、50歳女性が月2,800円の1口で加入して、加入後20ヶ月で死亡した場合、葬祭費用保障額は「1,858円(葬祭費用補償特約部分の月払保険料)×20回(死亡した日の前日までに到来した月払保険料の払込回数)=37,160円」となります。

  5. 葬祭費用保障額は加入年令によって異なります
    生前に支払われた戒名料や、墓地購入費用や位牌等の仏壇に関する費用、香典返し等は受け取れません。(死後に支払った戒名料は受け取れます。)
    尚、この保障額はあくまで限度額ですので、実際に支出した葬祭費用実費を保障額を限度として受け取れます。つまり、葬祭費用保障額が75万円であっても、実際に支出した費用が50万円であれば50万円を受け取ることになります。
  6. 積立型の保険ではありません。従って、満期返戻金や契約者配当金はありません。
    但し、保険期間中に後遺障害保険金が支払われる事故の発生がなく保険期間が満了した場合、5万円の満期お祝い金(無事故戻し金)を受け取れます(月2,800円の1口で加入した場合)。
  7. 保険期間の途中で解約した場合には、一定の解約返戻金を受け取れます。
    但し、途中解約した場合には上記6の満期お祝い金(無事故戻し金)は受け取れません。
    また、加入後短期間もしくは保険期間満了近くでの解約については、解約返れい金が受け取れないことや、受け取れたとしても非常に少額となります。
    尚、死亡した場合には契約は失効し、たとえそれが保険期間の途中であっても解約返戻金は受け取れません。

以上、この保険の加入を検討されている方、これから検討しようと思われている方々のお役に立てば幸いです。

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