1/25にエジプトで発生した反政府デモにおいて現在のところ邦人被害は報道されていませんが、多くの日本人が空港で出国できず足止めされたようです。今回のケースを例にとって、このような事態における海外旅行保険の補償関係についてまとめておきます。

1.今回のデモによりケガをされた場合の補償

 海外旅行保険では、「戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変*1 」に起因する傷害や死亡については補償対象外と規定されていますが、反政府デモはこの事由に該当しません。従って、今回のデモに巻き込まれてケガをしたり死亡した場合については、保険金の支払対象となります*2

2.今回のデモを理由に旅行を取り止めた場合の「旅行変更費用担保特約*3 」の取扱い

 海外旅行保険のオプション(特約)として、親族の死亡・入院や自宅の火事など一定の理由で旅行を中止せざるを得なかった場合の旅行会社へのキャンセル費用や、途中で緊急帰国する場合の帰国費用を補償する「旅行変更費用担保特約」があります。この「旅行変更費用担保特約」は、渡航先もしくは経由先における「戦争、外国の武力行使、革命、政権奪取、内乱、武装反乱その他これらに類似の事変、暴動またはテロ行為」を理由とする場合も補償の対象としていて、今回のデモはこの内「暴動」に該当します。
 従って、エジプトが渡航先または経由先となっている時は、「旅行変更費用担保特約」を付帯していれば、今回のデモを理由に出国中止した場合のキャンセル料や中途帰国した場合の帰国費用は保険金の支払対象となります
 但し、1/25(火)に暴動が発生し、翌26日には外務省注意喚起情報が発出されているため、保険料領収日または契約日が日本時間において1/27(木)以降となる契約については、今回の件を理由とする取消料・帰国費用は責任期間外となり、補償されません。

3.保険期間の自動延長の取扱い

 乗客として搭乗しているまたは搭乗予定だった航空機・船舶・車両等の交通機関*4 が、今回のデモにより遅延または欠航、運休した場合、保険責任の終期が特別な手続なしに自動的に延長されます
 尚、ほとんどの保険会社では、自動延長の期間を特別な場合を除き「72時間限度」と定めています。

 ちなみに、2010年4月にバンコク(タイ)で反政府デモがありましたが、こちらについても上記と同様の扱いとなります。また同じく4月に起きたアイスランドでの火山噴火についても同様の扱いとなります。
 但し、2010年11月に発生した北朝鮮による韓国への砲撃については上記と扱いが異なりますので、詳しくはこちらをご覧ください。

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(注)
  1. テロ行為は除く []
  2. 各種傷害保険にも同様の規定があります。 []
  3. 取扱いのない保険会社もあります。 []
  4. 運行時刻が定められているものに限る。 []